今日読んだ本

闘争領域の拡大

闘争領域の拡大

フランスのウエルベックの処女作です。10年も前に書かれたとは思えない
現代の皮肉が痛烈です。主人公は30歳のソフトウエアサービス会社の
アナリスト・プログラマーで社会的地位は高い。
それに比べて、恋愛面はぱっとしない。
恋人と別れてから2年間異性関係がない。彼の考えは
完全に自由な経済システムになると、何割かの人間は大きな富を蓄積し、
何割かの人間は失業と貧困から抜け出せない。
完全に自由なセックスシステムになると、何割かの人間は変化に富んだ
刺激的な性生活を送り、何割かの人間はマスターベーションと孤独だけの毎日を送る。
経済の自由化とは、すなわち闘争領域の拡大である。
セックスの自由化も闘争領域の拡大である。
何割かの人間はその両方で勝利し、何割かの人間はその両方で敗北する。

結局、どんなに成功したエリートでも「愛」がなければ幸福感がない。
愛し愛されたい。つぅ…ありふれた結末かな…て感じですが、
それだけでない乾いた皮肉が効いて、なるほどと感心。

彼の他の著作の『素粒子*1
最新作の『プラットーホーム』も読みたいです。

素粒子

*1:2002年ダブリン文芸賞受賞